概要

本研究グループでは、電子線をもちいてナノメートル領域の構造と物性を解明する研究を行っています。 電子は光に比べて波長が短く(λ~10-12m)、物質との相互作用が強いため、光学顕微鏡やX線回折では観察が難しい単一の原子や分子まで観測することができます。
これまで電子線をもちいた様々な解析手法を半導体、磁性体、強相関電子系、準結晶、金属微粒子等多様な物質に適用し、 ナノレベルの構造と物性を明らかにしてきました。

また電磁気学・光学・量子力学等にもとづき、電子の波としての性質をいかんなく発揮させたさまざまな電子線イメージング手法の開発も行ってきました。
最近では、角運動量をもつ電子やスピンが偏極したパルス電子をもちいたまったく新しい物理現象の研究にもチャレンジしています。

研究内容

電子らせん波のイメージングの応用

特徴
  • らせん状に回転しながら進行
  • 右ねじの法則により磁場が発生
  • 強度分布がドーナツ型


生成方法
  • 透過型電子顕微鏡内で平面波を特殊な回折格子に入射することで回折波として生成


電子らせん波を磁性体に照射したときの変化を
検出することでナノスケールの磁性情報を取得



非弾性散乱電子による電子軌道解析

非弾性散乱

入射した電子によって試料原子の内殻電子が励起される


内殻励起を伴う非弾性散乱

⇒内殻電子がエネルギーを得る
⇒入射電子が試料を通過するときにエネルギーを失う

散乱した電子からわかること
入射電子の散乱は、
試料の電子軌道・電子状態を反映する

電子状態に関する情報が得られる

原子の電子状態の解析



電子回折をもちいた歪み解析

格子歪みとは


物質を原子レベルで見ると、原子が格子状に整列

この格子に力を加えると、格子の形状が変化(歪む)


歪みがわかると何がいいのか


歪むと物性が変化
例:Si(半導体):歪むと電子の流れやすさ向上
デバイス性能の向上

歪みを解析するには:収束電子回折法

ナノオーダーでモデルフリーな3次元歪み解析



準結晶の構造解析

準結晶は、結晶のような長距離秩序を持ちながら、結晶では許されない回転対称性を持つ。
その構造の特異性から新規な物性の発現が期待されており、その原子配列を明らかにするために、高分解能走査型透過電子顕微鏡(STEM)法を用いた観測を行っている。

高分解能STEM像、電子回折図形などと計算強度を組み合わせることにより、準結晶の精密な原子位置決定が可能となる。 これにより、電子状態計算を用いた理論的考察が可能となり、準結晶の特異な電子構造や準周期構造の安定化機構などの解明が可能となる。

準結晶の特異な物性をミクロな視点から解明



スピン偏極パルス透過電子顕微鏡を用いた新規分析手法の開発研究


スピン偏極パルス透過電子顕微鏡(Spin-TEM)
電子の自由度を活用したスピン偏極電子線を用いて
材料を観察・分析できる世界初の電子顕微鏡

特徴
  • レーザーを用いて電子を生成
  • 電子のスピン方向をコントロール
  • パルスレーザーで電子線をパルス化

スピン偏極・パルス電子を用いた分析手法の開発

スピン偏極電子を用いた材料分析手法の開発研究
電子銃:半導体からスピン偏極電子線を生成


ピコ・ナノ秒パルス電子線を用いた高速現象の観察
パルス電子線を用いて
局所領域のストロボ撮影を実現


ナノ領域で起こる状態変化や構造変化、
電子の運動などの瞬間的な変化の様子を解明